社内DXとは?推進が必要な理由や成功させるポイントを紹介

社内DXとは?推進が必要な理由や成功させるポイントを紹介

多くの企業でDXの推進が叫ばれています。しかし、スムーズにDXを推進し、ビジネスモデルの変革まで進んでいる企業は多くはありません。これまでのビジネスモデルや取引のあり方を、いきなり刷新するのはかなりハードルが高い取り組みかもしれません。しかし、社内の部門単位でデジタル化やプロセスの見直しに着手するのは可能ではないでしょうか。

そういった取り組みを社内DXといいます。ここでは社内DXが必要な理由や社内DXを成功させるためのポイントなどを、事例を交えてわかりやすく紹介します。

社内DXとは何か、どのように進めていくのか、どのような問題があるのかを知りたい方は以下のダウンロード資料もご覧ください。
社内DX推進は経営者の理解と協力が鍵!ガイドブックダウンロード

社内DXとは?

情報社会の発展や、後述する「2025年の崖」問題に伴い、日本企業の多くに、DXの推進が求められています。DXとは、デジタル技術を活用して業務プロセスやビジネスモデルを変革し、新たな価値を創出することです。

「変革」「新たな価値創出」と聞くと、ハードルが高く感じる企業もあるかもしれません。しかし、一部の業務プロセスの見直しや部門単位のデジタル化といったことなら、ハードルはぐんと下がるはずです。

そういった社内の小さなところからデジタル化やプロセスの見直しなどを行い、付加価値を創出することを、一般的に「社内DX」と言います。

DX自体の詳細については、「【徹底解説】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?必要性から成功事例まで」をご参照ください。
DXは、2000年代初頭から徐々に注目され始めました。初期の段階では、主に効率化とコスト削減が目的でしたが、時間が経つにつれて、イノベーションの促進、顧客体験の向上、新たなビジネスモデルの創出へとその焦点が移っていきました。現在では、DXは企業戦略の中核をなす要素となっています。

社内DXはDX推進の第一歩

日本企業が市場競争で打ち勝つためには必須とも言えるDXですが、まずは社内DXを進めることが、その第一歩となります。
社内DXは、主に企業内部のプロセスや文化に焦点を当てています。これに対し、外部に対するDXは顧客体験や市場との関係、新しいビジネスモデルの開発など、企業の外部に影響を与える活動を指します。これら二つは密接に関連しており、内部の効率化やイノベーションが外部の顧客体験や市場競争力に直接影響を与えることが多いです。

次に、社内DXの推進が必要な理由と、なかなか進まない理由を見ていきましょう。

社内DX推進が必要な理由

デジタル化の波は、企業運営のあらゆる側面に影響を及ぼしています。なぜ社内DX推進が必要とされるのか、主な理由を紹介します。

  • 業務改善と生産性向上

例えば経理部門で請求書や領収書などの書類を電子化したり、発送業務において送り状を発行するシステムを活用したりするなど、業務をデジタル化・システム化することで業務改善が進みます。その結果、生産性も向上し、企業の競争力を強化することが可能になります。

業務改善の進め方や注意点について詳しくは、
業務改善とは?進め方や効果、向いている業務・部門まで幅広く紹介」をご覧ください。

  • 働き方改革の実現

各種業務をデジタル化・システム化することで、時短勤務やテレワークの導入がスムーズになります。多様な働き方が可能になれば、居住地や育児や介護などが理由でこれまで就業できなかった人も勤務可能になり、人材不足解消にもつながります。

  • BCP対策

社内DXの推進により、業務のデジタル化が進みテレワーク可能な環境づくりが進みます。これは同時に、災害が起きても事業継続しやすい体制づくりにつながります。非常時に優先すべき業務についてデジタル化を進めておくことは、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)対策としても有効です。

  • 全社的なDXの足がかりになる

新しいデジタル技術を活用することで、大幅な業務効率化や新たな業務プロセス、これまでにないビジネスモデルの創出や新しい価値創造が可能になります。デジタル技術により顧客に新たな価値をもたらし、厳しい市場競争に打ち勝っていける競争力をつけることこそ、「2025年の崖」問題の回避策となり、DXが目指すゴールです。

小さな社内DXが、いきなり大幅な業務効率の向上や顧客に感動を与えるような価値の創造につながるわけではありません。しかし、部門単位の業務効率化や顧客のささやかな利便性向上などを一つひとつ積み重ねていくことが、全社的なDXへとつながっていきます。

2025年の崖についての詳細は、「2025年の崖とは?意味と企業への影響、克服するためにすべきことを紹介」をご覧ください。

以上のように、さまざまなメリットを得られる社内DXですが、思うように進まない企業も少なくありません。その理由はどこにあるのでしょうか。

社内DXが進まない要因

社内DXが進まない要因として、主に次のふたつが考えられます。

  • 経営層や社員のDXへの理解不足
    経営層や社員のDXへの認識の甘さや理解不足が、社内DXの推進を阻む大きな要因となっています。特に決定権を持つ経営層の理解が不可欠です。全社的なDXを念頭に、規模の小さな社内DXについても情報システム部門や現場任せにせず、経営層自身が積極的にかかわらなければなりません。現場の社員にも理解が求められます。社内DXは、いずれ全社的なDXへとつながります。他部署の話ではなく、自部署を含めた全社でDXを推進していくという意識を社員全員が共有していくことが、スムーズな社内DX推進へとつながります。
  • DX人材の不足
    2025年の崖に陥る要因として、システム構築・保守運用を行うエンジニア不足が問題になっていますが、DXの推進に必要なスキルを有する「DX人材」の不足も顕著です。DX人材の不足も、DXが進まない大きな要因といえます。人材確保には外部に委託する方法がありますが、DX人材にはデジタル技術に関する知見やスキルだけでなく、自社の業務に関する知識や経験も必要です。そのため、社内での育成も検討しなければなりません。

DX推進に必要な人材については、「DXを推進するために必要な人材と自社でDX人材を確保するためのポイント」をご参照ください。

DXが進まない要因については、「日本におけるDXを阻む課題とは?実現に向けたステップも解説」をご覧ください。

社内DXを成功させるには?

DXとは、企業運営全体にデジタル技術を用いることで新たな価値を創造することですが、DX推進への第一歩は、社内DXにより、まずは効率化が必要な業務プロセスをIT化することです。
社内DXを成功させるためには、複数の要素が重要な役割を果たします。ここでは、デジタル技術、人材とスキル、組織文化とリーダーシップという三つの主要な要素と、基本的な取り組み例について記述します。

デジタル技術の活用

社内DXの基盤となるのは、最新のデジタル技術です。以下の技術は特に重要です。

  1. クラウドコンピューティング:柔軟性とスケーラビリティを提供し、リモートワークやコラボレーションを容易にします。
  2. ビッグデータと分析:大量のデータを収集・分析し、意思決定をデータ駆動型に変えます。
  3. 人工知能(AI):自動化、予測分析、顧客サービスの向上など、多岐にわたる用途で活用されます。

人材とスキル

技術だけではなく、それを活用できる人材が不可欠です。以下の点が重要です。

  1. デジタルスキルの向上:従業員に対する継続的な教育とトレーニングを提供し、デジタルスキルを強化します。
  2. 新しい役割の創出:データサイエンティストやAIスペシャリストなど、新しい技術に対応するための新しい職種を設けます。
  3. 多様性と包摂性:多様なバックグラウンドを持つ人材を採用し、革新的なアイデアを促進します。

デジタルスキルを習得し、新たな仕事へのチャレンジを支援することを表す「リスキリング」は社内DXを強力に推進するものとなります。リスキリングについては、以下の記事をご参照ください。

リスキリングとは?DX推進のための人材確保に不可欠な戦略

DX推進やリスキリングに取り組むにあたり、政府の助成金も活用できます。助成金については、以下記事やセミナー動画が役に立ちます。

DX推進に利用できる補助金・助成金の種類と受給までの流れを紹介

【5年で1兆円】政府が投資するリスキリング助成金 活用セミナー

組織文化とリーダーシップ

技術と人材の両方を支えるのが、組織文化とリーダーシップです。

  1. 変革を推進する文化:オープンで柔軟な組織文化を育成し、変化に対する抵抗を減らします。
  2. リーダーシップの役割:経営層がDXのビジョンを明確にし、組織全体にその重要性を伝えます。
  3. 従業員のエンゲージメント:従業員が変革の一部であると感じられるよう、コミュニケーションと参加の機会を提供します。

社内DXの基本的な取り組みの例

  • 書類のデジタル化・ペーパーレス化

紙ベースの書類をデジタル化し、承認・決裁業務などをシステム化します。これによって処理のスピードが上がり、ペーパーレス化の推進につながります。
デジタル化した書類はクラウドストレージに保存します。保存や管理の手間が省け、時間や場所を問わずアクセスが可能です。

社内DXの基本となるペーパーレス化については、「ペーパーレスの必要性やメリットは?紙帳票のデジタル化と業務の自動化の進め方」やデジタル化(デジタイゼーション)のメリットとは?紙からの移行ステップや注意点」をご参照ください。

  • 業務の自動化

RPAにより、各部署で発生するさまざまな定型業務を自動化します。また顧客対応ツールを導入することで、顧客対応や営業活動の一部あるいは全部についての自動化も可能です。

業務の自動化は業務改善につながります。詳しくは、「業務改善の手順とポイントは?成功したアイデアも紹介」もご参照ください。

また、社内の40業務をRPAで効率化し、月間350時間の改善を得られた事例を以下にて紹介しています。ぜひご覧ください。
【RPA導入事例】昭和電機株式会社がRPAで自動化した40業務のダウンロード資料はこちら

社内DXを成功させるためのポイント

社内DXを成功させるには、次のようなポイントがあります。

  • 経営層が積極的に推進する

情報システム部門だけでなく、経営層が積極的に社内DXを推進し、経営戦略に組み込んで、全社で取り組む必要があることを示します。

  • 社内DXの目的や全体像を明確にする

「社内DXの推進によって何を実現したいのか」というビジョンを明確にすることも大切です。それによって、そのビジョンを実現するために必要な具体的な取り組みが見えてきます。

  • DX人材を確保・育成する

社内DX実現のためには、DX人材の確保が必須です。社内DX推進によって自社のビジネスを変革していくためには、DXの知識だけでなく、自社の業務に詳しい人材が求められます。そのため、社内で人材を発掘し、育成することも必要です。

DXを成功させるポイントについては、「中小企業でDXを推進するには?現状や成功させるためのポイント」をご参照ください。

社内DXの計画と実行

社内DXを計画し実行するにあたり、目標設定、プロジェクト管理、関係者の連携を押さえましょう。これらは社内DXの成功を左右します。

目標設定とKPIの定義

  1. 明確なビジョンと目標の設定:DXの目的を明確にし、達成すべき具体的な目標を設定します。
  2. KPIの定義:進捗を測定するためのKPIを定義します。これにより、プロジェクトの成果を定量的に評価できます。

プロジェクト管理:アジャイル手法の適用

  1. アジャイル手法:柔軟性と迅速なフィードバックを重視したアジャイル手法を採用します。これにより、変化するビジネス環境に迅速に対応できます。
  2. クロスファンクショナルチーム:異なる部門の専門知識を組み合わせ、より効果的な解決策を生み出します。

コミュニケーションの活性

  1. 社内DXの推進により影響を受ける、すべての関係者とのコミュニケーションを進め、ニーズと期待を理解します。
  2. コミュニケーションは、定期的かつ透明性がなくてはなりません。そうすることで、相互にサポートする気持ちや信頼が醸成されます。

リスク管理と問題解決のアプローチ

  1. リスク評価:社内DXという限定されたプロジェクトだとしても、技術的や組織などリスクを特定し、評価する必要があります。社内DX後の顧客に向けたDXを視野に入れ、市場関連のリスクも押さえておきます。
  2. 問題解決戦略:問題が発生した場合の対応計画を事前に準備します。迅速な対応が重要です。

社内DXの成功事例

社内DXの成功事例をいくつか紹介します。

  • 損害保険株式会社A

これまで紙の書類で行ってきた保険金支払い業務にクラウドサービスを導入し、ワークフローをデジタル化しました。それによって社内の業務効率化とペーパーレス化に成功しています。

また検索性の向上によって、顧客対応業務のスピードが向上しました。大規模災害の際にも、顧客にスムーズに対応することが可能になっています。

  • 総合商社B

書類のデジタル化によるペーパーレス化を進めていましたが、これまで作成した紙の書類の存在がネックになっていました。量が多いだけでなく、各支社でスキャンの際に使っている機械が異なっていたため、手作業でのスキャンと保存の作業がなかなか進まなかったのです。

そこで、スキャニングシステムによってスキャンからデータ化して保存、管理までを統合して行えるツールを導入したところ、既存書類のデータ化が一気に進みました。書類の運用管理の手間も省け、時間や場所を問わず書類にアクセスできるようになり、業務効率化に大きく貢献しました。

また検索性が向上し、必要な情報を探すために顧客を待たせることが少なくなり、顧客満足度向上にもつながりました。

  • 食品製造業C

これまでは1日1回、人が行っていた工場の湿度チェックをIoT化しました。それによって作業を減らすだけでなく、リアルタイムに状況を把握できるようになりました。また、チェックのためにラインを止める必要がなくなり、生産性も向上しました。

工場の環境を高い精度で管理できるようになり、製品の品質も向上しています。

社内DXの事例や具体的な施策については以下のダウンロード資料もご覧ください。業務課題から改善事例などを紹介しています。
【業務改善事例】コロナ禍における、業務現場が知りたい三大効率化事例

DXを推進するためにはまずは社内DXから

DXが必要と理解していても、いきなり全社をまきこんだ大掛かりなDX進めるとなると、社員だけでなく経営層の中にも躊躇する人がいるかもしれません。担当者の負担が特に大きいと思われる業務、極めて非効率になっている業務プロセスなど、改善を急ぐ必要のある小さな部分から社内DXを進めていってはいかがでしょうか? そんな小さな積み重ねが、全社的な大きなDXへとつながります。

ただし、小さな社内DXにせよスムーズに進めるには、企業全体を巻き込んだDX推進モードと人材、そしてDXを実現するための技術が必要です。

DXを実現するための技術は、「DXを支える技術とは?技術を生かしてDXを推進するのに必要な人材も紹介」で紹介しているように、さまざまなものがあります。DXを支える技術についても理解し、自社に必要なものを選定しましょう。

ユーザックシステムの「Autoジョブ名人」は、DX推進の後押しとなる「社内DX」をサポートするRPAツールです。業務そのものの効率化に加え、業務プロセスも自動化することで、生産性を高めることができます。Autoジョブ名人はRPAツールとしての品質の良さ、豊富な導入事例や業務改善を成功に導くサポートで好評を得ています。

Autoジョブ名人の口コミはこちら https://boxil.jp/service/4788/reviews/

RPAツール「Autoジョブ名人」|稼働安定性を重視した純国産RPA|ユーザックシステム